〈引用:糖尿病 今、注目の薬とは?使いやすくなったGLP-1受容体作動薬〉
糖尿病 今、注目の薬とは?使いやすくなったGLP-1受容体作動薬
糖尿病の薬 患者さんに応じて選ぶ
糖尿病にはさまざまな薬が使われます。インスリンの分泌を良くする薬、インスリンの効きを良くする薬、ブドウ糖の吸収を遅くする薬、ブドウ糖を尿中に排せつする薬、インスリン製剤に分類できます。血糖値が高くなる原因は患者さんごとに異なるため、それぞれに応じた薬を使います。複数の薬を組み合わせることもよくあります。
最近注目される薬や、薬の使い方の新しい傾向についてお伝えします。注目される2つの薬
今、治療の現場で特に注目されているのは、「GLP−1受容体作動薬」と「SGLT2阻害薬」です。
GLP−1受容体作動薬は、もともと1日1〜2回 自分で注射して使う薬でした。しかし最近、週1回の注射で効果が持続するものが出てきました。これまで仕事の忙しい人などは注射のタイミングを逃すことがありましたが、週1回なら、より確実に注射できます。また、介護を受けている人が介護をする人に注射してもらう場合、週1回なら負担が軽くなります。さらに、注射ではなく、のみ薬のGLP-1受容体作動薬が登場しました。これまでは血糖値を下げる効果が大きいにもかかわらず、注射薬であるために使うのをためらう人がいましたが、のみ薬になれば、より多くの人が使うようになるでしょう。
SGLT2阻害薬は「ブドウ糖を尿中に排せつする」という独自の作用が注目されます。血糖値を大きく下げる効果もはっきりしてきました。副作用の尿路感染や脱水に対する注意喚起も進み、より安心して使えるようにもなりました。
しかも、SGLT2阻害薬には心臓や腎臓を保護する効果があることが最近明らかになりました。そのため、糖尿病に心不全や慢性腎臓病を合併している人には積極的に選択されています。
食欲を抑える・体重を減らす
GLP−1受容体作動薬とSGLT2阻害薬には「体重を減らす」、そしてGLP-1受容体作動薬には「食欲を抑える」という特長があることも、最近はっきりしてきました。
GLP-1受容体作動薬は すい臓に作用してインスリン分泌を良くしますが、胃にも作用して胃の動きを抑え、脳にも作用して食欲を抑えます。そのため体重を増やしたくない人に向いています。
SGLT2阻害薬はブドウ糖を尿中に排せつしますが、エネルギー源であるブドウ糖が体の外に出ていくために体重が減りやすいのです。ただし、やせ過ぎたり、食欲が増したりすることもあり、注意して使います。
まったく新しい薬も登場
2021年9月、イメグリミンという新しい薬が登場しました。これまでの薬とは作用がまったく異なり、すい臓に作用してインスリン分泌を良くすると同時にインスリンの効きも良くすると言われます。新しい薬なので、どの程度効果があるか、どのような副作用があるかを見極めながら、慎重に使っていく必要があります。
低血糖を起こしやすい薬は?
糖尿病の薬が効き過ぎ、血糖値が下がり過ぎてしまうのが低血糖です。低血糖を特に起こしやすいのは「インスリン製剤」と「スルホニル尿素薬」です。この2つほどではありませんが「グリニド薬」にも低血糖のリスクがあります。このような薬を使う場合には、低血糖に注意する必要があります。
重い低血糖なら すぐにグルカゴンを
重症の低血糖で意識を失うような場合に備え、ぜひ持っていてほしいのがグルカゴンという薬です。これまで注射薬だけでしたが、新しく点鼻薬(上)が登場し、非常に使いやすくなりました。低血糖を起こした人の鼻の中に、そばにいる人が噴霧して使います。低血糖で意識を失ったが、グルカゴンで命をとりとめた、という人は少なくありません。
インスリンに ほかの薬をプラス
1型糖尿病はインスリンで治療しますが、2型糖尿病の治療では、インスリンと他の薬を組み合わせ、インスリンの量や回数を減らすことがあります。これには利点がいくつかあります。
まずインスリンを注射する回数が減れば、その負担が減ります。また低血糖のリスクも減ります。インスリンは最も低血糖を起こしやすい薬だからです。さらに体重の増加を防げます。実はインスリンを使うと体重が増加しやすい傾向があるのですが、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を一緒に使用し、インスリンの量を減らすことができれば、体重が増加しにくくなります。
インスリンとGLP-1受容体作動薬の合剤(注射薬)が登場したことも注目されます。これまで2つをそれぞれ注射していましたが、一度の注射ですむようになりました。
週1回のインスリン 臨床試験中
現在インスリンは毎日注射する必要がありますが、週1回の注射ですむインスリンの臨床試験が日本でも最近開始されました。
糖尿病は治療法が大きく進歩し、多くの患者さんが長生きできるようになりました。それに伴い、高齢になって、自分でインスリン注射をするのが難しくなる人も増えています。そうした時代に週1回のインスリンは大いに待ち望まれています。
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