まず、インスリン(Insulin)とは
昔は、確かインシュリンと表記されていたと思うんですけど記憶違いかな。
インスリンとか薬品名を聞くと、まずどんな化学物質・分子でできているのかが気になります。
物質の分子式や構造式がわかれば、何となくわかった気がするんですよね。
高校時代、亀の甲(ベンゼン環)を見て化学が嫌になったという人が多いようですけど、僕は一応その辺りの苦手意識は幸い持たずにすみました。
インスリンはホルモンですので、タンパク質の仲間です。正確にはペプチドです。
タンパク質は多数のアミノ酸がペプチド結合(一般的にはアミド結合)をしてできている高分子化合物ですが、ペプチドは、タンパク質ほど大きな分子ではありません。
タンパク質の分子量は基本的には1万以上です。
ペプチドとは
ちなみに「ジ(di)」とは2個という意味で、「トリ(tri)」は「3」を表します。
また、アミノ酸が2~20個程度結合したものをオリゴペプチド、もっと多くのアミノ酸が結合したものをポリペプチドといいます。
一般に高分子化合物(分子量1万以上)はポリマーと言いますが、ポリは「多い」という意味です。
インスリンの種類と製造
原料となる動物種(牛、豚、魚、人)によって分類されています。
現在は、DNAの組み換え技術によってヒト型インスリンが製造されており、治療にはヒト型インスリンを用いるのが一般的です。
ヒト型インスリン は、大腸菌や酵母菌にヒトインスリンの遺伝子を組み込んで生産しています。
大腸菌や酵母菌はどこにでも存在する菌類で珍しいものではありません。
ちなみに、袋に入ったお米を1年以上、放っておいたら虫が湧いて食べられなくなったので、花壇に肥料代わりに埋めたことがあります。
そしたら、そのお米に酵母菌が繁殖してアルコール発酵を行い、花壇からお酒の良い匂いが漂ってきたことがありました。このように酵母菌はどこにでもいる菌なんですね。
酵母菌のアルコール発酵
アルコール発酵を化学反応式で表すと以下のようになります。
1分子のブドウ糖(グルコース)からエタノール(お酒のアルコール)と二酸化炭素が2分子ずつできます。
アミノ酸とは
アミノ酸は、分子内にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)をもつ化合物の総称です。
このカルボキシル基が酸性を示すので、アミノ酸という名称になっています。
グリシン以外のアミノ酸は、L体、D体という光学異性体を持ちますが、タンパク質を構成しているのは全てL体であるため、アミノ酸を表記するときにL-を省略することもあります。
自然界には500種類ほどのアミノ酸が存在していますが、タンパク質を構成しているアミノ酸はたった20種類しかありません。
タンパク質とは
糖尿病は大昔から知られていた
紀元前のエジプトのパピルスにすでに記録があるそうです。
でも、治療法がわかったのは、つまりインスリンが発見されたのは20世紀になってからです。
豚や牛の膵臓からインスリンが抽出されたのですが、最初はインスリンの結晶450 グラムを得るのに、ウシ・ブタのすい臓が4.5トンも必要だったそうです。
そのため、患者1人の1年分のインスリンを製造するのに約70頭のブタが必要だったらしい。
それにヒトのインスリンではないので、アレルギーなどの心配があったけど、現在は遺伝子の組み換えでヒトインスリンがつくられているので大安心というわけ。
ヒトインスリンの構造
ヒトインスリンの分子量は5807です。
51個のアミノ酸が結合してできており、下図がそのアミノ酸の配列(結合の仕方)を示しています。
ウシやブタ、ヒツジなど、さまざまな動物のインスリンは、この51個のアミノ酸の配列が少しづつ異なっています。
名称 | 略号 | 名称 | 略号 | 名称 | 略号 | 名称 | 略号 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
グリシン | Gly | アラニン | Ala | バリン | Val | ロイシン | Leu |
セリン | Ser | トレオニン(スレオニン) | Thr | システイン | Cys | アスパラギン | Asn |
グルタミン | Gln | チロシン | Tyr | トリプトファン | Trp | アスパラギン酸 | Asp |
フェニルアラニン | Phe | プロリン | Pro | イソロイシン | Ile | メチオニン | Met |
グルタミン酸 | Glu | ヒスチジン | His | リシン(リジン) | Lys | アルギニン | Arg |
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